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Book Data : モノリス

『モノリス』日野啓三(写真:稲越功一)/トレヴィル

出版社 :

トレヴィル

原書刊行年 :

1990

ISBN / C :

4-8457-0511-7 / c0095

私的分類 :

日野啓三

備考 :

目次

  • I. 地の果てで
  • II. 黒衣の男たちの谷
  • III. ごみを捨てにゆくとき
  • IV. 森の黙示録
  • V. 細胞たちの森
  • VI. 青い沼
  • VII. 聖なる形
  • VIII. 都市が自然を呼び寄せる 1
  • IX. 都市が自然を呼び寄せる 2
  • X. ヒヒ関係
  • XI. 冬の光
  • XII. 月を見上げて
  • あとがき

Note

I. 地の果てで

(タクラマカン砂漠)

p.011

砂漠のように不毛だ、などと人は簡単によく言うけれど、ここはあらゆる差異と変化のつきることのない豊かな変容の現場だった。

p.012

大まかに砂粒はどれも同じように見えるが、実は直径0.05ミリから2ミリまでの岩石の砕片と、砂は定義されている。つまり直径0.05ミリから2ミリまでの違いがある。さらに石英、長石、雲母、磁鉄鉱、輝石、角閃石、軽石など、母体岩石の違いによる重さ、硬度、輝度の違いがあり、ほぼ球形の形状にも歪みや変形がある。
そうした微細な差異が、風に吹かれたときの動き方、吹き飛ばされ方の違いとなり、斜面を流れるときの転がり方の違いとなって、ひとつひとつの砂丘、一秒前の砂丘の形が無限に違うことになる。
少なくとも私のまわりで、大いなる死の土地のはずの砂漠が、晴やかに息づいて生きている。嵐のときならきっと荒々しく吠えて……。
もしこの宇宙が原子たちの差異とその組み合わせによって成り立っているのなら、いま私はこの世界の万物の多様さと変化の最も深いドラマの仕組みを、透かし見ていることになる。
本当に、透きとおるように生き生きと抽象的な感覚だ。そして砂のひと粒ひと粒は、それぞれ独立した個としての無言の純粋な実体である。砂のようにバラバラだとも人はよく言うけれど、この見事な砂丘の形、稜線の鋭さ、しなやかな曲面、優美な斜面を、刻々につくり出しているのは、その砂たち自身の自己形成力である。泥のように粘りついて狎れ合うのではなく……。
世界の果てが実は世界の最も深い場所。
宇宙がその仕組みの秘密を露出する最も豊かな空間。
開かれたとても豊かな気分。抽象的でリアルで、即物的で幻想的で。

p.015

(原始の海の生物とのアナロジー)

p.016

砂も夢を抱き続けている。あるいは鉱物にさえ美しい形をとらせる何かが、このわれわれの宇宙には本来的にそなわっているかのようだ。
(無限の時間と空間のなかで、それぞれの性質を孕んで生まれ消えた無数の宇宙のなかの、そんな性質を偶然に内在したひとつが、われわれのこの宇宙に違いない)

p.017

(イスラム教について)

彼らの神、絵にも描かれず石像にも彫られない神、方角だけで礼拝される神、砂漠に最もふさわしい神……。

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